中国週間

Myarn2005-04-29

後宮小説
陋巷に在り」「墨攻」の中華偽史もので名高い酒見賢一の処女作。古代中国にありそうな、ある架空の国家の後宮をめぐる騒動を主軸に、その国の内乱から滅亡までを描く。と書くと仰々しいがタッチは軽くて読みやすく、主人公の少女やそれを取り巻く登場人物の描写が非常に瑞々しい。読後も爽快な余韻が残る好編。近藤勝也のキャラクターデザインで一見ジブリ作品かと思わせるようなOVA版もあるが未見。見たい。

墨攻
やはり舞台は古代中国、同上の酒見賢一作。発表時は「後宮小説」の次作あたりだったはず。大国から侵略を受けて落城寸前の小城に、守城指南役として墨子教団の男が招かれる。戦力差が歴然とする中、男はたった独りでどのようにして城を守り抜くのかを描く異色中編。ビッグコミック森秀樹が連載していた漫画版もあり、原作では戦術マシーンのようだった主人公の性格も丸くなってオチもハッピーエンド(笑)に変わった。ところが原作版のラストまでがこの漫画版の第一部であり、第二部からは陰謀の罠にかかった主人公が墨子教団から追われるはめになる完全オリジナル版が始まる。墨者(墨子教団の信徒)の総本山も刺客もそれぞれショッカー総本部とショッカー怪人めいており、そうした奇想天外な描写は楽しいものの第一部の盛り上がりを超えることはできず、今一つ消化不良に終わるのであった。

『爆風三国志 我王の乱』
壮大な群雄割拠の中華戦国時代を描く一大ロマン・三国志。ただ連載が漫画ゴラクであるということと、本作のタイトルとを見れば自ずと知れようが、正味あれらはヤクザ親父どものショバ争いに過ぎんけえのう!なあボン!(誰?)という真の声にみちびかれた狂った逸品(最上級の褒め言葉)。温厚・人徳の人というイメージの強い主人公劉備玄徳にしてからが、世の不正や悪事に対し敢然と(必要以上に)牙をむくムキムキマッチョな熱血漢として描かれており、幸薄い娘を手込めにする悪代官など脳天から股間まで一刀両断。「ド畜生があああっ!」「お天道さまは見逃してもこのオレが許さねえええっ!」こんな玄徳見たことない。おかげで粗暴キャラがウリの張飛などすっかり影が薄く(笑)なってしまう体たらく。なんともラーメンライスの似合う三国志である。